いまさら2009漫画ベスト10

2009年度個人的漫画ベスト10を今更発表してみる。

1.ジャバウォッキー [久 正人]
「実は恐竜は現代も生き延びていました。しかも二足歩行で」という妄想を爆発させ、
歴史の裏には恐竜の介入があったというトンデモネタでスパイものに挑むにはかなりの
知識量がないと、整合性が保てないはずだが今作はこれを安々とやってのけ、ユーモアを
入れる余裕すらある。雑誌が潰れて連載終了しまった今作と、突然の隕石の落下による
恐竜の絶滅とのアナロジーを考えると泣けながらもちょっと笑える。

2.ハルシオンランチ [沙村 広明]
無限の住人』の沙村広明による、エイリアン襲来系ギャグ。時事をおりまぜながら
賞味期限が短いネタを躊躇なく使い、身内ネタ的な笑いに終始するスタイルは、漫画を
消費物と考えるならば、正しい。
あと、ヒヨスちゃん…ベタでかわいいです。

3.WATCHMEN [アラン・ムーア原作、デイブ・ギボンズ作画]
ハリウッド映画化されたことにより、長らくプレミアム価格だった原作が、めでたく
新装版として再販された。「自警団として活躍していたヒーロー達(中身は普通の人)と
超能力を持つ本物のスーパーヒーロー(一人だけ)がいる世界でヒーロー殺しが始まった」
という内容だが、あまりに複雑な要素が絡まりあっているので私にはうまく解説できない。
ただひとつ言えるのは・・・ロールシャッハかっこいいです!

4.ベントラーベントラー [野村 亮馬]
こちらもエイリアン襲来系なのだが、エイリアンが日常化した世界でしかもエイリアンは
人間に介入せず、神のように不可侵な存在で互いにディスコミュニケーション
な世界を描いている(例外もいるが)。作風や絵的にも新しいとはいえず、SFの醍醐味と
もいえるセンス・オブ・ワンダーを感じられないが、不思議と『こち亀的』なおもしろさの
安定感があり、のほほんと読むのに適している。

5.SARU [五十嵐 大介]
五十嵐大介がブレイクした『魔女』から早数年、『海獣の子供』でイマイチ楽しめなかった
五十嵐ファンでも絶対楽しめる今作。まだ前編しか出ていないので評価するのは早いかも
しれないが、名作の予感はプンプンする。衒学的なネタを伏線として、どう活かせるかが
見物である。

6.三文未来の家庭訪問 [庄司 創]
「科学技術の飛躍、エネルギー問題が劇的に解決した人類」という設定は垣間見え無いが、
両性具有の主人公が普通に存在している現代という設定を違和感なく受け入れられるほど
のSF感がうまく描けている。庄司 創さんは今一番期待している新人作家です。

7.機動旅団八福神 [福島 聡]
強敵がいきなりしょぼくなり、無情にもあっけなく死ぬところで福島節が炸裂した。
相変わらず特異な言語感覚を持つ福島さんの今作は、終わってみれば、あぁなんだ。
これは詩だったんだなぁと、しみじみ。

8.ぼくらの [鬼頭 莫宏]
「超巨大宇宙ロボが、子供の命を消費して戦う話」と書くとひどい話に思えるかも
しれないが、安心して大丈夫。もっとひどい話です。

9.GIRL[Jillian Tamaki、Mariko Tamaki]
コミック版『ライ麦畑でつかまえて』。周りから共感を得られないひねくれた10代の
どうしもうもない閉塞感が誇張もなく淡々とリアルに描かれている。こっちも向こうも、
そういう「どうしようもない感」は変わらないんだなぁ。

10.オールラウンダー廻 [遠藤 浩輝]
「弱者が共同意識体となって平行世界へ飛び出す」というハードSF漫画『EDEN』を
描ききった遠藤浩輝さんの新作はなんと「格闘技漫画」。もう出し尽くされた感のある
ジャンルにEDEN同様の現実に裏打ちされたリアルな格闘技漫画で挑んでいる。
寝技が楽しめる格闘技漫画は『オールラウンダー廻』だけ!
それにしても最近、格闘技漫画増えましたね〜。しかも『グラップラー刃牙』のような
ファンタジー格闘技じゃなくてスポーツとしての格闘技で。



[総評]
今思いつく10作品をあげてみました。順位は思い出した順です。というのも
こういうのってランキングすることで何か薄まりそうなので嫌なんですよね。
だから登録順というわけなのです。

エンターテイメントとしては「ジャバウォッキー」
誰でも読めそうなのが「オールラウンダー廻
ニュージェネレーションが「三文未来の家庭訪問

といったところでしょうか。

以上でございます。